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記事: ブランド コンサルタント 橋口麻紀さんに聞く、ギフトの思い出

ブランド コンサルタント 橋口麻紀さんに聞く、ギフトの思い出

ブランド コンサルタント 橋口麻紀さんに聞く、ギフトの思い出

イタリア人の旦那さまから贈られたギフトの数々は、情熱的なエピソードに満ちたものばかり!そこには、日本人とはひと味違う“ギフトの流儀”があるのでしょうか?

家族みんなでプレゼント交換を楽しむイタリアのクリスマス

8年前にイタリア人の旦那さまと結婚して以来、クリスマスはイタリアで過ごしているという橋口さん。旦那さまと互いに贈り合うクリスマスギフトは、ふたりで街に出掛け、一緒に選ぶのが恒例になっているそう。

「ここ数年、彼からのクリスマスギフトはいつもお財布。彼いわく『財布は毎日使うものだから、自分がプレゼントすることでお守りがわりにしてほしい』という意味があるのだそうです。イタリアのひとたちは、クリスマスをとても大切にしています。必ず家族で集まってプレゼント交換をしますが、各自が全員にひとつずつギフトを用意するから、帰省のたびにスーツケース1個分はギフトでいっぱいに。みんなに同じものを配ることはないので、ひとりひとりの顔を思い浮かべながら、その人が喜んでくれそうなものを選びます。ただ、特に高価なものである必要はなく、時には誰かから頂いたものをリサイクル利用することも。珍しいことではないので、失礼にあたるという意識はありません。それよりも大事なのは、贈る相手にフィットするものを選ぼうとする姿勢。その代わり、ラッピングには力を注ぎます。イタリアでは、ラッピングは自分たちでするのが一般的。何を贈るかはもちろん、渡した瞬間に心を弾ませてもらえる美しいラッピングを施すことも、ギフトの一部なんですね」。

相手を理解しようとする姿勢こそが素敵なギフトを生む

イタリアブランドのPR業務に20年以上携わり、イタリア人との交流も深い橋口さんが、彼らについてとりわけ印象的なのは、“イタリア人は、家族や大切なひとのことをつねに考えている”ということ。

「たとえば、イタリア人はひとと会う時、挨拶がわりにまず家族の話をします。ビジネスシーンでも『家族は元気にしてる?』と尋ねることから会話がはじまるんですよ。平日は仕事が終わったらまっすぐ帰宅し、家族と夕食のテーブルを囲むのがくつろぎのひととき。我が家もそうですが、『今日のランチは◯◯』といったたわいもない話題から仕事の悩みまで、とにかく色々なことを話しますね」。

日中は離れて過ごしていても、それを補うかのように多くの会話を重ねることは、家族の絆を重視し、お互いを深く理解し合おうとするイタリア人らしい習慣なのかもしれません。そしてもちろん、そんな習慣はギフトにも反映されていて、旦那さまからのギフトはいつも、橋口さんがその時々に欲しいものや必要なものを、これ以上ないタイミングで贈ってくれるそうです。

「以前、イタリアに帰省する際に、彼が仕事で遅れて来ることになった時には『僕がいなくてもイタリア語で充実したコミュニケーションがとれるように』と、電子辞書をプレゼントしてくれました。また別の時には、私が“いつか自分で買いたいもの”としてまとめていたウィッシュリストのなかから、トレンチコートをロンドン出張時に買ってきてくれたことも。彼からのギフトで“なぜいまそれを?”と感じたことは一度もありません。私の好きなものも性格も知り尽くしたうえで、いつもきちんと意味のあるギフトを選んでくれているように感じます。もちろん、ギフトを選ぶ際には誰もが相手の好みや状況を考えると思いますが、彼や彼のまわりのひとたちを見ていると、イタリア人は特にそういう部分にこだわっている気がします」。

“想い”を表現する。ギフトはそのためのたいせつな手段

いつも左手につけているブレスレットも、旦那さまからプレゼントされたもの。時々一緒にショップを覗いては、チャームを買い足しているそう。結婚記念日には一緒に過ごした年数分のバラを贈られたり、誕生日にはサプライズ旅行に連れて行ってもらったり。聞けば聞くほど羨ましくなるようなギフトストーリーが続きますが、さらに、必ず添えられているのが、心のこもったカード。

「ギフトにカードは付きもので、いつもまるで手紙のように長いメッセージが添えられています。彼に限らず、“感情表現豊か”と言われるイタリアの人たちは、自分の中にある相手への想いも惜しみなく伝えようとしますね。たとえば、彼は、私が作る日々の食事にも毎回『ありがとう』と言ってくれます。カードに添えられたメッセージも毎日の『ありがとう』も、考えてみれば、それ自体が“言葉のギフト”なのかもしれません。

“モノ”にしろ“言葉”にしろ、気持ちを目に見えるカタチで表現する文化は、はたから見ていても楽しくハッピーですし、素敵だと思います。私も彼と生活するようになって、両親や親しいひとたちに対して、好意や感謝を素直に言葉に表せるようになりました。それともうひとつ、最近友人に指摘されたのですが、私はお店に入ると結構な頻度で『これは彼が好きだから買っていこう!』と言っているようです。自分では意識していませんでしたが、あちこち影響されているみたいですね(笑)」。

写真/滝浦哲 取材・文/村上治子 2016.12.16

橋口麻紀 はしぐちまき

ブランド コンサルタント。1990年よりイタリアのアイウエアのPRに携わり、現在はmodus vivendi株式会社の代表としてアイウエアとイタリアのブランドのブランディング、またPRコーディネーターとして、イタリアのプロダクトやスタイルをPR。modus vivendiとは“ライフスタイル”の意味。長きにわたるイタリア人との仕事を通じ、日本人から見たイタリアのライフスタイルも提案。現在はケリング アイウエア ジャパンのPR&コミュニケーションにも従事。

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