気になるあの人に聞く、ギフトの思い出 (第1回)

“ギフト上手”と評判のあの人は、どんなギフト体験をしているのでしょうか?
贈る時、贈られた時、特に印象深かった思い出について聞いてみました。
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ロエべPR 平塚ユカリさん

数年ぶりに仕事復帰した頃に頂いた益子焼のオブジェや、友人を励ましたくて贈ったガーゼのパジャマ。
モノに込められた想いが伝わる、平塚さんのギフト・ストーリーをご紹介します。

絆を繋ぎ、視野を広げてくれた
益子焼のオブジェ

スペインの高級レザーブランド、ロエベでPRを務める平塚ユカリさん。これまでもハイブランドのPR職を歴任し、“ファッション業界きってのギフト上手”として、雑誌の贈り物特集をはじめ数々の取材を受けてきました。そんな平塚さんが、これまでに贈られて印象に残ったギフトは、手のひらサイズの益子焼のオブジェ。それは、彼女が旦那さまの海外赴任に伴って渡った中国から帰国し、数年ぶりに仕事復帰したタイミングで任された、あるプロジェクトの記念に頂いたものだったそう。

「2013年の秋、ロエベの新しいデザイナーとしてジョナサン・アンダーソンが就任し、翌年の夏に来日することになったんです。その時、彼から『表参道の旗艦店に何か日本的な要素を取り入れたい』という提案があり、白羽の矢が立ったのが、益子焼の濱田窯の陶器。濱田窯の創始者で人間国宝の濱田庄司先生が、ジョナサンの敬愛する英国の陶芸家バーナード・リーチと親交が深かったことがその理由だったのですが、現在濱田窯を継いでいるのは庄司先生のお孫さん。寝耳に水のお話だったにもかかわらず、わざわざスペインとパリまでロエベを見に行ってくださったのです。そこでジョナサンから直接プロジェクトへの想いを聞き、その結果、創作してくださったのがショップに置かれている作品。お店のものはもっと大きいのですが、このオブジェは、その中のひとつを小ぶりサイズにしてプレゼントしてくださったものなのです」。

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オブジェのモチーフは、“ノット(結び目)”。それは“絆”を意味し、“ロエべと濱田窯”“日本とスペイン”、さらにはそもそものきっかけを生み出した“バーナード・リーチと濱田庄司先生”など、多くの絆の上に成り立ったプロジェクトを表現しているのだそう。
「ロエべのことを考えて作ってくださったことは本当にありがたいですし、デザインの意味を聞いた時は胸を打たれました。またインスピレーション源はもうひとつあって、それはロエベのアーカイブである“フラメンコ”バッグの結び目ディテール。この結び目は、もとはタッセルだったものをジョナサンが新たにアレンジした部分なのですが、濱田先生はこれを絆の象徴と見てくださったんですね。そして私たちも、そのお陰でこのディテールに新しい価値を見出すことができたんです。最近ではバッグをご購入されるお客さまにも、『この結び目はロエベの職人からお客さまへ繋ぐ絆です』とお話しているんですよ」。

今ではこのオブジェは、平塚さんのご自宅に大切に飾られているそうですが、大きなプロジェクト前など仕事が忙しくなると、会社に持ってきたくなるのだとか。
「“この仕事も成功させよう!”という決意表明のような、お守りのような・・・、このオブジェは私にとって、そんな存在なのかもしれません。それに、これがデスクに置いてあると空間が豊かになる気がするんです。もともとジョナサンは、“日常のための贅沢こそが、現代における真のラグジュアリーだ”という信念を持っていて、益子焼のように日常から生まれた民芸品にはとても共感できるそうです。私はここ数年、海外生活で仮住まいが多かったこともあり、身のまわりの空間を潤すという意識が希薄になっていたかもしれません。でも、このオブジェを見ていると、ジョナサンの話が実感としてわかる気がします。自分の居場所を整えることの大切さに、あらためて気づかせてもらったのだと思います」。

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柔らかな着心地のパジャマに
「がんばって!」の気持ちを込めて

一方、最近、平塚さんが差し上げて喜んで頂けたと感じたギフトは、歳下の友人に贈ったパジャマだそう。夢に向かって頑張っている友人を見て、「応援してるよ」という気持ちを伝えたくて、誕生日でも記念日でもない“普通の日”に贈ったのだそうです。

「その友人は普段からとてもがんばり屋さんなのですが、特にその頃は、人生のターニングポイントにいて努力している時期でした。そんな中、占いに行ったら、案の定『もう少しリラックスする時間を取るように』と言われていて。食事にでも誘おうかと思いましたが、いまは勉強も必要だし時間を大切にして欲しいと思い直し、替わりに何かギフトを差し上げよう、と。“リラックス”ということで、最初はアロマ系も考えましたが、もともとアロマ好きな方なのできっと好みがあるし、逆に難しいですよね。色々と悩んで、睡眠の質を上げることが肝心と思いつき、パジャマに決めました。彼女は肌が敏感そうだったので、探したのはとにかく肌に優しい素材のもの。別の友人に代官山の「ao(アオ)」というガーゼの専門店を教えてもらい早速見に行ったら、ふわふわととても肌触りがよく、敏感肌のお客さまのリピーターも多いと伺ったので、そちらで購入しました」。
そうしてギフトは購入したものの、今度は相手に気を遣わせない差し上げ方に迷ったそう。
「理由もなく頂き物をするのは、受け取る方も気を遣うかもしれないですよね。お返しをしなくてはと悩ませる場合もありますし。結局、彼女の興味のあることに関連づけて『これ開運アイテムみたいだよ、がんばって!』と言って渡しました(笑)」。
その後、お友達はそのパジャマを愛用してくれていて、ギフトにまつわる話題になると、この時の話をしてくれるのだとか。

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以前から、公私によらず“ギフトの達人”と評判だった平塚さん。それはきっと、贈られる方の状況に配慮し、気持ちに想いを馳せ、喜んで受け取ってもらえる差し上げ方にまで心を砕く細やかさがあればこそ。現在は、以前よりも差し上げる機会が減ってしまったので、たまのギフト選びがいっそう楽しくなったそうです。
「ギフトは、贈った方に喜ばれるのはもちろん、選びながらその方のことを考える時間も自分にとっての思い出になります。お誕生日などの記念日はもちろんですが、お礼を伝えたい、励ましたいなど何か気持ちを伝えたい時、ギフトに替えて贈りたくなるのかもしれません」。
平塚さんのお話を伺っていると、贈り上手は、同時に頂き上手でもあるということがわかります。ギフトを“モノ”だけのことに終わらせない感受性の豊かさが、贈り、贈られることを、いっそう意味のあるものとして膨らませてくれるのでしょう。

 

写真/大畑陽子 取材・文/村上治子

平塚ユカリひらつかゆかり

ロエべPR。
大学卒業後、化粧品、ジュエリー、ファッションなど海外一流ブランドの広報を歴任。
細やかな対応と裏表のない発言で各メディアからも人気。
ギフト上手としても知られていて、女性誌等での特集企画の取材も多数。
ロエベ公式サイト http://www.loewe.com/